「祈り」
作詞 高木郁乃
作曲・編曲 吉田ゐさお
Acoustic Guitar 天野清継
Pedal Steel Guitar 駒沢裕城
Accodion 田ノ岡三郎
Additional Protools 中脇雅裕
Keyboards & Region Conduct 吉田ゐさお
Recording 松岡義昭、吉田ゐさお
Mixing 松岡義昭

 作者が高校生の頃、よく聴いていたレコードがありました。その中でも、特に何度も何度も、針を落として聴いていた曲があります。この場合曲というより、イントロと言う方が正しいのかもしれません。その何度となく繰り返し聴いてたイントロというのは、駒沢氏の演奏によるPedal Steel Guitarでした。
 言葉にしたら乱暴で希薄ですが、その丸みを帯びた浮遊感のあるPedal Steel Guitarの音が奏でるメロディーは、当時自分の感情を表現し人と交流する事が苦手だった少年には、まるで自分の内なる思いを代弁してくれて居るかの様に思えたのです。こんなにも音楽が自分の心の琴線に触れ、涙が溢れた経験は初めてでした。それは聴くだけに留まらず、自分から音を発したい願望へと変わって行ったのでした。

 しかし「自分は表に出るような人間じゃない」「音楽で成功する極一部の人間に自分は含まれていない」と自ら決め付け、音楽への思いにフタをしてしまいました。それから数年の後、作者は本当に音楽の道を「プロ」として歩みはじめる事となった訳ですが、それは音楽への強い思いが重いフタを押し上げたと言うより、多くの事をあきらめ割り切った結果と言う感覚であります。全ての事がそうであるように、好きという感情だけでは成り立たない訳であります。
 実際仕事が10ある内の、本当にやりたい事なんて1つか2つ。そんな数少ない仕事ですら「プロ」である以上、多くの条件や意見を聞き入れ、なおかつ自分の納得の行くポイントで結果を出さなければならない。作者は未だ自らを「アーティスト」と呼んだことも、思ったことも無い。作編曲家であり、音を作る「職人」であると言う自覚であります。
 そんないくつもの割り切りからか、以降聴いた音楽もライブも、今後の「参考資料」と言う目でしか見ることができなくなり、いつしか作者の部屋からは音楽が消えた・・・。自ら発した音楽と引き替えに、音楽を素直に楽しむ心を失ったと感じました。